WHO(世界保健機構)認定の、うつ病と不安症の予防と介入を目的としたグループ学習プログラム

レジリエンス

SzV174-HE187

力を伸ばしていく元になる力

「レジリエンス」とは、困難な状況、不幸事、災難に出会った時に、困難を跳ね返す力、回復力、逆境に適応する力です。ストレス状況において社会的に、つまり学業でも仕事面でも、力を伸ばしていく元になるといわれています(Henderson & Milstein, 1996)。発達心理学では、「子どもたちに備わる能力で、不利な条件を体験した後自動的に回復し正常な発達過程に戻せる力(Sigelman, 1999)」と説明されています。

レジリエンスとは (児童心理学者ポーラ・バレッ­ト教授)

「レジリエンス」のある子どもは、周りの人から前向きに注目され扱われる、自分の経験を建設的にとらえる、友人や周りの大人に前向きに接する、社会的責任感がある、人の感情に気を配り共感する、ユーモアがある、自己肯定感が高い、問題解決能力がある、楽観的であるなどの特徴があり、これらは生まれつきの固定したものではなく、変化し育てることのできる力だといわれています(Harvey & Delfabbro, 2004)。
フレンズアプローチとは、子どもの不安支援の過程でレジリエンスを育てるものです。子どもたちはいろいろなものに不安を抱きます。ある研究によると2-14歳の90%に当たる子どもは少なくとも一つ怖いもの、不安になる対象があるそうです。欧米のデーターでは子どもの発達にそって次のような対象を挙げています。

子どもの発達に関係して見られる不安

7~12ヶ月 知らない人を恐れる、突然不意に現れる漠然としたもの
1歳 保護者から離れること、トイレ、けが、知らない人
2歳 大きな音、動物、暗い部屋、親しい人と離れる、大きなもの、環境の変化などいろいろ
3~4歳 親しい人と離れること、暗闇、動物、物音
5歳 悪い人、動物、暗闇、親しい人と離れること、身体的危害
6歳 超自然的存在、身体的危害、雷と稲光、暗闇、一人でいる・寝ること
7~8歳 超自然的存在、暗闇、惨事や災害、けが
9~12歳 試験、学校行事、けが、外見、雷と稲光、死、暗

子どもの発達段階に一般的にみられる不安はたいてい成長と共に乗り越えていくでしょう。しかし、不安な気持ち・感情が長引きその程度が大きくなって生活(睡眠、学校生活、社会生活など)に影響するなら、何らかの対応が必要になります。
子どものストレスについても理解が必要です。私たちはストレスの大きい社会生活を送っています。ある程度のストレスは活動に役立つこともありますが、ストレスレベルが高くなると生活に良い影響を与えないでしょう。環境の急激な変化、学校・家庭内のストレス、親のストレスなどが子どものストレスに関わっています。子ども、特に幼児はストレスのある状況では、恐れ、不安、失望感、孤立感、怒りなどいろいろな感情のシャワーを浴びるような経験をするそうです。ストレスを体験する子どもの症状はいろいろです。泣く、ぐずる、怒る、攻撃的になる、眠りにくい、夢でうなされる、一人でいるのを怖がる、引き込もる、赤ちゃん返りのような振る舞い、また落ち着きがない、悲しがるなどの症状、さらに吐き気、頭痛、腹痛、発熱などの病状を示します。
不安な感情は、何らかのストレス、落ち込み、怒りなどと関連していると理解できます。不安な気持ちや怒り、落ち込みなどの自分の感情に気付きどう対応できるのかを知っていれば生活が楽になります。そして感情が前向きで安定しているなら生活は豊かになるでしょう。 不安やうつに効果がある治療法に認知行動療法があります。どんな考えが不安な気持ちを起こさせるのか、その感情がどういう行動に結びつくのかなど認知と行動の関係を自分の体験の中で探り出し、認知を換えることで行動を変容させる療法です。子ども支援の認知行動療法では、子どもは一連のスキルを順序よく習い練習します。不安な考えや行動を換える方法と緊張感を緩和する方法、社会的スキルや感情コントロールを学べば、不安な気持ちや落ち込みに自分で対応することができるようになります。
フレンズプログラムは、ポーラ・バレット博士(オーストラリア、クイーンズランド大学教授)によって開発され研究されている子ども支援プログラムで、認知行動療法に基づいています。レジリエンスを育むプログラムとして、イギリス、オランダ、カナダ、ニュージーランド、香港などいろいろな社会文化圏で実施されています。4-7歳児対象のファンフレンズ、小学生対象フレンズ、中高生対象のフレンズがあり、各プログラムは楽しく取り組める発達に応じた活動で構成されています。
オーストラリアでは、幼稚園、学校、病院、相談所などで、先生や学校カウンセラー、心理士、相談員によって、グループまたは個人を対象に行われています。カナダのブリティッシュコロンビア州などでは、どの子どももフレンズプログラムに参加するというポピュレーションアプローチを実践しています。これは地域保健活動によって病気を予防するアプローチと同じです。 プログラムが「エビデンスベイスト」であるというのは、介入や予防支援の効果を客観的にデーターで検証していくもので、「実証にもとづく実践」は世界の臨床心理学のスタンダードになっています。世界保健機構(WHO)はエビデンスベイストの効果的な子ども支援プログラムとして「フレンズ」を認定しています(2004年WHOレポート)。

不安症とは

不安症は、文化的背景によって罹患率に差はあるものの、抑うつ障害同様、非常に一般的な精神疾患である。不安症には広範な種類の障害が含まれるが、これまではそのうち全般性不安障害、社会恐怖症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に一次予防の重点が置かれてきた。アメリカにおける不安症関連の年間費用は1990年には約640億ドル(1998年のドル換算)であったと推定される。ほとんどの場合、最初に不安症を発症するのは小児期から青年期にかけてであるため、この年齢層が一次予防の主な対象となる。子どもの精神病理の中で不安症は最も一般的なもので、年間罹患率は5.7~17.7%で推移しているが大体は10%以上である(Costello & Angold, 1995)。青年期および成人後にも不安症から抜け出せないままとなる率が高いことが証明されている(Majcher & Pollack, 1996)。
高リスク集団の例としては、心配性の親の子ども、児童虐待、事故、暴力、戦争、災害やその他のトラウマの被害者、強盗などの被害にあう危険が高い職業やトラウマ被害者の治療に当たる職業の従事者が挙げられる。不安症の危険因子および防御因子には制御が可能で特定の不安に対するものや一般的なものがあるが、これにはトラウマとなる出来事、小児期の学習プロセス(心配過多の親が悪い手本となったり管理過剰になるなど)、自分ではコントロールできないという感覚、自己効力感の低さ、対処方略、社会的支援などが含まれる。早い時期に人生に関わるような不運な出来事を経験すると神経生物学的に見て脆弱になり、それによって神経的なストレス反応システムが長期にわたって変質するため、成人後に感情障害や不安症にかかりやすくなる。
根拠に基づいた予防対策は、対象とする集団や不安症の種類、対処する危険因子や防御因子の種類、タイミング(トラウマとなる出来事を見越して行うのか、事後に対応するのかなど)、用いる手法などによって様々である。

情緒的なレジリエンスの増進と事前教育

不安症に対する重要な対策で、かつ有効性が証明されているのは、情緒的なレジリエンスの増進と不安症の発症を避けるのに必要な認知スキルの向上に焦点を絞ったものである。7~16歳向けの不安症予防プログラムとして有望なものに、オーストラリアのフレンズプログラムがあるが、これは不安症治療で効果を発揮したプログラムを予防用に変換したもので、学校や保健所、病院などで幅広く活用されている。フレンズは10回のセッションからなる認知行動療法プログラムで、より効果的に不安に対処するスキルや、情緒的レジリエンス、問題解決能力、自信を高めるスキルを子どもに教える。対照実験によると、介入前には不安の症状が顕著だった子どもにプログラムを実施したところ、不安症と診断される最初の発症は、対照群では54%であったの対し、介入後6カ月間予防が施された状態では16%と減少が見られた(Dadds et al., 1997)。同様に、プログラムを学校で一般生徒に実施した場合も、リスクの高い子どもや青少年に対し選択的に実施した場合も、不安の症状が大幅に軽減されたという結果が出ている(Lowry-Webster, Barrett & Dadds, 2001など)。フレンズは、スウェーデン、オランダ、アメリカでも実施されている。

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